単に外を歩いているだけで「この苦行を続けたら、うっかり悟りでも開いてしまうのではないか…」という気分になってきますが、そんな外歩きの際にちょこっとだけ気が紛れそうな小ネタを。
特にセミの鳴き声のせいで「夏は騒々しい」と感じる方も多いと思いますが、実は冬(低気温の時)のほうが、屈折の関係で音(空気の振動)が上空に逃げにくく、遠くの音が良く聴こえます。
これは、遠方からの様々な音が合わさって場を薄く満たす「暗騒音」の量に影響し、真夏の暑さの中は暗騒音が少ない状態になっています。
そのため、セミの声など近隣で鳴っている音を除くと、夏の屋外はけっこう「静か」です。
松尾芭蕉は
閑さや岩にしみ入る蝉の声
と詠みましたが、あえて風流や文学的解釈を抜いて即物的に捉えてみても、真夏の音響空間の描写として正確なのかも?などとも思ったりします。
その「夏の閑さ」の中では、身の回りの音がひときわ浮き立って聴こえます。涼を感じるためのアイテムとして「風鈴」が広まったのも、音色の透明感と同時に、暑い空間の中でより明瞭に聴こえて効果的だったという面もあるのかもしれません。
猛暑の中の外歩きで気が滅入ったら、意識を耳の方に集中すると、普段は気に留めていない様々な音の粒が、辛さを少し紛らわしてくれるかもしれません(とはいえ、くれぐれも熱中症にはご注意を)。